80 年、という重み
喜久屋は創業以来、80年も続く老舗パン屋。
それだけの長い年月、
ひとつの屋号を守り抜くというのは、
並大抵のことではない。
戦前、現在の若旦那の祖父が立ちあげたこの店。
初めのうちは順調かに思えたが、第二次世界大戦の混乱の中、
やむなく店をしまうことになる。
戦後すぐも、材料の入手が困難で
店にパンを並べるだけで苦労したこともあったと言う。
その後、学校給食の始まりや食生活の欧米化によって、
急速にパンの消費需要が高まり、製菓・製パン業は軌道に乗る。
しかし、近年になり、製造のシステム化や大規模化の流れに伴って、
多くの個人商店は店を畳まざるを得なくなる。
そんな中でも、喜久屋はしぶとく、
たくましく生き残り、人々のためにパンを作り続ける。
80年もの間続けてこれたのは、店に対する地元の人たちの愛着と、
3代目として汗を流す、
若旦那の努力があるからに他ならない。