春の桜に、冬の雪
会津の季節、愛し愛し
和田女将の、好きな季節。
それは、会津の、春。桜咲き、若草芽ぐむ、再生の季節。
やっと桜が咲いたあって。待ってましたあって。
和田女将は、からりと華やいだ声を出して、言う。
そのようすからは、桜の恋しさと共に、冬の厳しさも、伝わってくる。でもね、と和田女将は続ける。
でもね、冬は寒いけど、夜の雪、朝の雪、すごく綺麗。本当にね、拝みたくなるくらい。
夜、月明かりの中、しんしんと。雪がさわさわ積もる音ばかりが聞こえてくる。その静謐。
朝、陽光に照らされて、きらきらと。世界の始まりのように、光が生き生きと踊る。その輝き。
夜があって、朝が来る。冬、過ぎて、春、花開く。
めぐるめぐる、再生のとき。
和田女将は、会津の朝を、会津の春を、愛しげに愛しげに、待ち望む。